「常識に尻を向けろ」
血のように濃く赤い下地に太い白文字で書かれたこの自動車会社の広告が、
打席に立つ大谷翔平選手のうしろではぼんやり小さく浮かび上がっていました。
本物の彼を直接見たのは、まだ日陰に雪の残る今年1月の鎌ヶ谷グラウンド。
この大きな大きな青年は、まだあどけなさが残る18歳の日ハムプロ野球選手。
「彼はやっぱりピッチャーだ」
「いや、バッターだ」
テレビの解説者ですら、同じ時間帯で意見が二転三転するほどの熱狂ぶり。
あの淡々とした表情でヒットを何本も打たれたら、そうなる気持ちわからなくもありません。
「生兵法は大怪我のもと」
と言われます。表面だけを装い、形だけにこだわって中身は実は空っぽな時。
大谷選手の素晴らしさは、謙虚さと冷静さ、真っ直ぐさ、そして大きなビジョンにあると思います。
きっと彼は、マスメディアが騒ぐほどに「二刀流」にはこだわっていないような気がします。
野球にはピッチャーもバッターもあるのですから、ごく自然なことです。
チーム勝利のため、野球上達のため、自身向上のために純粋に己の技術を磨く。
自分らしさを、とことん伸ばして。
それをポジションや成績といった概念で最初からフィルターかけるのが凡人、かも。
最初っから「〇〇でなければ」と決めつけてしまっていること、結構あったりします。
例えばですが、勉学(あるいは仕事)と遊び。別々に考えるのが必ずしも普通でしょうか。
もしご自分自身のことや、周囲から限界があると思われるのなら、否や、「ない」、
つまりその限界を超えた領域の「存在」へのチャンスも、かならずあるわけです。
新入生も、新社会人も、体育局出身の皆さんも、
たくさんの挑戦や失敗を通して、自然で素晴らしい人生に発展していくこといつも祈っています。